着物と日本髪と変身体験が大好きなぷにすけです。
私の舞妓変身体験の中でも、繰り返しチャレンジ?している大きなテーマの一つが、この「レトロ舞妓」体験。
何をしているか一言で言えば、「大正・昭和の舞妓さんに倣ったお支度」の舞妓姿を体験するというものです。
憧れの姿を実現したい!
戦前の舞妓さんは、今の舞妓さんよりずっと幼い少女でした。
舞妓さんの衣装に見られる「肩上げ」や「袖上げ」は、本来子供の着物に施される物です。
舞妓さんの年齢が十代後半から二十歳くらいになった現代においても、この幼さを象徴する記号は、舞妓さんの衣装にそのまま引き継がれています。
割れしのぶにおふくといった日本髪、振袖にだらりの帯、足下はおこぼという基本的なスタイルも変わっていません。
とはいえ、やはり時代ごとの流行りなどはあるわけで、顔の描き方、着付け、髪型も、同じと言いながら時代によって趣が異なります。
とくに戦前と戦後では、舞妓さんの年齢的なことも含め、かなり違うんですよね。
私の舞妓さんのイメージを作っている物の一つに、日本画に描かれた舞妓さんがあります。
コレなどはまさにこの時代の舞妓さんなわけで、憧れの対象なんですよね(*ノωノ)
それをどうにか実現できないかと思い、お店に相談したのがきっかけです。
ペンション祇園さんでアンティーク衣装での舞妓変身体験が実現
相談したのは、初めての舞妓体験以来何度もお世話になっている「ペンション祇園」さん。
最初は着付けや髪型、お化粧の感じだけでもというつもりでした。
ところがなんと、ペンション祇園さんではアンティーク着物(昭和初期からそれ以前の衣装)のコレクションにも力を入れていて、その時代の着物もあるとのこと!
そこで思い切って、お着物もその時代の物でお願いすることにしました。
現代の衣装とは趣の異なる柄行。
手の込んだ作りのお着物は、本当にステキです。
体験するにあたっていろいろ条件はありますが、興味のある方には体験する価値ありです。
1については、もうどうしようもないです。
ちなみに身幅も狭いです。
個々の着物によっても若干差はありますが、体験可能な身長はおおむね150センチ前半までと思ってください。
2の通常より料金が高い理由は、「大切なお着物なので、長く大事に残しておきたいから‥」とのことです。
通常の変身店の衣装のように、「ダメになるまで着倒して最後は処分」という性質の物ではないので、もし体験を検討されるのでしたら、その部分はぜひともご理解いただいた上でお願いいたします。
実際の体験写真をご紹介します
今も昔も、舞妓さんの衣装は京都の伝統工芸の粋を集めたすばらしい物ばかりです。
とりわけ昔の舞妓さんの衣装ともなると、今と違って着物が普通に着られていた時代。
職人さんの数も多く、今より舞妓さんがずっと多かったこともあって、手の込んだ作りのものが多数見られます。
柄行も現代の衣装とは趣が異なり、写真集などで見ても非常におもしろいです。
体験写真をいくつかご紹介します。
髪も着付けも、昔の舞妓さんの雰囲気に合わせてもらっています。
かんざしも、今の舞妓さんとは趣の違うもので。
こちらの着物は、デザインがとてもおもしろい着物です。
裾模様には黄金色に実った稲穂。
その上を群れ飛ぶ雀。
その間には雀よけの案山子や鳴子が大ぶりに描かれ、舞妓さんの着物らしい華やかさを添えています。
裾の模様は紫と朱(オレンジがかった赤?)の二色が、途中で切り替わるように入っていて、正面から見ると左右で裾の色が異なっているのがわかります。
右からと左からとでは、着物の印象が異なって見えますね。
写真を見返してもつくづくおもしろい、ステキなお着物だったなあと思います。
もっとデザイン自体がわかりやすい写真を撮っておけばよかったと、今更ながらに後悔しています。。
春の黒紋付の装いをレトロ風に
いつもは、ペンション祇園さんでお願いしているレトロ舞妓。
こちらは華陽さんで、レトロな仕上がりでとお願いした舞妓姿です。
ちょうど「春のをどり」の時期に訪れたので、それに合わせて黒紋付に大輪の桜のかんざしの装い。
京都花街の春の「をどり」。お茶席でお茶をたてる舞妓さんは、黒紋付の奴島田です。
本来お茶をたてるのは芸妓さんで、お茶をお客さんに持っていく控えが舞妓さん。ですが、舞妓さんが二人お茶席にいたことがあり、お茶をたてる舞妓さんがこのお支度でした。
昔の舞妓さんらしく、お化粧はあまり書き込まず、髪型は鬢の幅を狭く下げ気味に結っていただきました。
レトロっぽく、一部モノクロでお届けします。
髪型は黒紋付きに合わせて奴島田です。
髪は鬢を狭く、でも髷はぽってりと大きめに。
だらりの帯も昔風に、交差させずまっすぐに。
後ろの衿の抜き加減も控えめで、帯揚げは芯を入れていません。
昔の舞妓さんは今よりもずっと年齢が低く、当然体も小さいです。
着物や帯、かんざしなども、サイズ自体今の物とはおそらく違うと思います。
ビラかんざしも、今に比べて明らかに小振り。
それっぽくみえるよう、通常華陽さんでは「ちびっ子舞妓」ちゃんに使う小さいビラかんざしを挿しました。
今回の変身。華陽さんも初めての経験で、完全に再現するのは難しいとのことでした。
それでも資料として持参した「京舞妓十二月」を見ながら、着付けや髪型の雰囲気を伝え、どうにかそれらしく仕上げていただきました。
資料を見ながら、「あーでもない」「こーでもない」しながらの体験でしたが、こういう「お店の方と一緒に作っていく体験」も私は大好きです。
無茶ぶりに応えていただいて、本当に感謝です。
公式華陽
昔の舞妓さんのことがわかる本
この時代の祇園や舞妓さんについて、知ることができる本をご紹介します。
『「祇園」うちあけ話』三宅小まめ・森田繁子
祇園で生まれ育ち、戦前戦後と生きた芸妓・小まめさんが語る祇園町の本です。
戦前の祇園の様子が、小まめさんのやわらかな京ことばでつづられています。
写真も載っていますので、今の舞妓さんとの違いをビジュアルからも知ることができます。
「祇園うちあけ話」は↓こちら「祇園に生きて」を改題・再編集したものです。
『祇園 粋な遊びの世界』
発行年は1995年の本ですが、昭和初期の舞妓さんの写真も一部載っています。
↑の体験写真で紹介した縞模様の着物に似た衣装の舞妓さんの写真もあります。
大判で写真も多い上に、写真以外の記事も読みごたえがありおすすめの本です。
『祇園 昭和13年~35年』浅野喜市
タイトル通り、昭和13年から35年の祇園の様子を写した写真集です。
昭和30年代が多め。
前編モノクロ写真ですが、今とは違う祇園町の街並みや、舞妓さんたちの日常の自然な様子がとても面白い本です。
置屋内部の生活の様子もあり、今こういう本は出せないんじゃないかなと思います。
そういう意味でもかなり貴重な本です。
『京舞妓十二月』吉川観方
日本画家で、時代風俗研究でも知られる吉川観方編著の本です。
タイトル通り、京舞妓12ヶ月の装いを一月ずつ写真に収めて紹介しています。
衣装や髪型を見せることが目的の本なので、掲載されている写真も、全身、後ろ姿、バストアップと様々な角度から撮られています。
全編モノクロ写真なのが残念ですが、当時の京舞妓の装いを知る上ではとてもよい資料といえるのでないでしょうか。
本書が刊行されたのは昭和31年ですが、序文によると昭和8~9年ころから撮影したとあるので、掲載されている舞妓さんの写真は多くが戦前のものと思われます。
今の舞妓さんとは年齢が違いますし、お化粧や着物、髪型やかんざしの雰囲気も随分違います。
今の舞妓さんの写真集と見比べてみると、いろいろ興味深いと思います。
昔の舞妓さんの装いに興味のある方には、ぜひぜひお薦めしたい本です。
購入は古書店のみ。図書館にしても、置いている所は少ないかもしれません。
レトロ舞妓で「ブラ付きのかんざし」をつけないのは?
「レトロ舞妓」では、舞妓さんの花かんざしとしては今や定番とも思える「ブラ付きのかんざし」をしていません。
写真のかんざしのように、花のかんざしの下にたくさんぶら下がったいる飾りのことです。
写真を見ると、そういうかんざしはしていないんですよね。
↑の吉川観方先生は、「最近(昭和30年頃?)流行りだし」て「かんざしの看板のようでうるさい」と、このブラの長いかんざしを評しています。
かんざしや化粧、この当時ですでに変わりゆく舞妓の風俗を憂いているというのが、また興味深いところです。